『黄金列車』についての覚書

『黄金列車』についての覚書 I

この小説はフィクションであり、史実から離れた部分も含まれている。歴史記述としての正当性を要求する意思は一切ないが、読者への便宜及び興味を持たれた方の手掛りになるよう、背景と実際の事件について簡単に纏め

『黄金列車』についての覚書 II

ハンガリー王国1920-1944 第一次世界大戦終結まで、ハンガリーはオーストリアと俗に二重帝国と呼ばれる政治体を形成していた。同一の君主を戴くが軍事外交財政以外は独立した王国、という体制である。 二

『黄金列車』についての覚書 III

ハンガリーのユダヤ人 第一次世界大戦の終結をハンガリーは敗戦国として迎えることになった。独立直後の共和制は、戦後の国際体制に恭順を示そうと武装解除したところに、やはり独立したチェコが進攻して北のスロヴ

『黄金列車』についての覚書 IV

ハンガリー王国のユダヤ人政策 ――1920年代 ハンガリー王国で最初の反ユダヤ法は、1920年に出された大学への登録制限である。 第一次世界大戦の終結――というか敗戦は、それまで制度に蓋をされてきた反

『黄金列車』についての覚書 V

ハンガリー王国のユダヤ人政策   ――ドイツとの駆け引き ドイツにハンガリー王国が接近し、一蓮托生の運命を辿った最大の原因は、既に触れた領土問題にある。トリアノン条約で領土を三分の一にされたハンガリー